イマジネーション

Chatoki茶時



第7回の茶時、左右のSalonにて。

激しく降っていた雨はすぐに穏やかになり、鶯の声が響き渡るなか、
久しぶりに茶時が始まりました。

美術工芸史専門の前崎信也センセイ(京都女子大学准教授)の語りに導かれ、
京都企業で活躍する方々の会話が弾み、広がります。

白壁に掛けられた掛軸。
大正から昭和時代の陶芸家・河合卯之助の作。
蕗の葉とその上を歩く蝸牛は、墨の濃淡によって奥行き深く大胆に
描かれています。

箱書を見てみると、そこには”富貴”の文字。

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富貴といえば、牡丹のことを表しますが、描かれているのは蕗。

この掛け軸の箱を初めて開ける人は、中にどんな荘厳な牡丹の花が
描かれているのか、期待を膨らませながら紐を解きます。
するするとお軸を滑らせたところに現れるのは、とっても身近な・・・

期待を面白く裏切る、箱から始まるストーリー。
昔の人の語呂遊びに思わず、くすっと笑ってしまいます。

また隅っこに描かれている蝸牛。
”蝸牛角上の争い”という言葉があるように、周囲にある争いごとは
蝸牛が互いの角をパキパキ当て、争うようなこと。
この絵は、もっと広い世界があることを気付かせてくれる、と
感じる人もいます。

ここで、一茶庵の佃梓央さんによって一煎目のお茶が淹れられました。
下から突き上げるような舌に伝わる感覚、新茶ならではの味わいと、
佃さんは言います。
口にふくむと、芽吹く生命の力強さに、目の前の空間がより鮮やかに
感じられます。

鼻に抜ける香りの余韻を愉しみつつ、次に意味をもっている絵の
役割についてのお話へと続きます。

明治時代、近代化=西洋化が国策の目標となり、京都からも多くの
人が絵を学ぶために海外へ渡りました。
そこで今まで積み上げてきたものが、静物画的に間違いと否定された
日本人。やがて絵の意味を捨て、イマジネーションを捨て、
洋画の技法を習得していったと。。。

いつも立ち返る「日本らしさ」という場所。
それは思想(志)と精神、想像力と技に見え隠れする世界。

海外へ行った当時の多くの人たちが置いてきた、もしくはやむなく
手放してしまった糸を、今に生きる私たちが繋ぎ直すタイミングなのかも
しれない。

そんなことを思いながら、茶時はまだまだ笑い絶えることなく
続いていきました。

若王子倶楽部 左右KOGEI GALLERY & SALON IN KYOTO
営業時間 11:00~17:00営業日 月・・金・土・日曜日
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