【特別賞】
桂川 美帆 氏 棗「にほえをとめ」
φ6.5 x H6.3
―制作にあたって―
本作品は、日本の伝統染色技法「ろうけつ染」と漆塗の技法を融合させてた、
これまでにない新しい漆の加飾表現の棗です。
木を染色するという事はこれまでにも例がありますが、私は、木に模様を
染め描くという表現技法で、現代の生活に寄り添うような作品を制作して
います。
その手法は、蝋による防染技法「ろうけつ染」を用いて行うものです。
蝋の高い防染力は、木材にも有効であると考え、木に染色技法で模様を
染めるという研究を漆芸作家の小田伊織氏と始めました。
染料による発色は、従来の色漆による加飾よりも彩度が高く、透明感のある
色感が特徴であるといえます。
色漆のぽってりとした質感と、木地を染色した軽やかな色模様との対比を
生かして、艶やかに咲く躑躅と、萌ゆる緑の景色を表しました。手入れ
された躑躅の木を、棗のフォルムになぞらえています。掌の中で、小さな
庭木を愛でるように扱ってもらえればと思います。
<中山福太朗氏(茶人)>
棗に使う技法として新しく、また表情も面白いものでした。
色味もキツそうに見えて茶席の雰囲気に合う落ち着きがあります。
ただ、容易に中棗の形を選んだように見えてしまい、この技法を
生かしきるためには、別の器形があるのではないかと思いました。
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この一点が他のお道具との空気をガラリと変えるような色の
組み合わせと質感。
どの茶碗を横に置くのか、想像力が刺激されそうです。
染色というとお茶のなかで使われるのは、布という限られた世界。
そこから飛び出すという発想力と勇気、制作に対する意力は
変化を起こしたいという情熱のもとにあるということを、
改めて桂川さんから感じました。
文・撮影= Izumi TK
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