再び安芦にて。
穏やかに佇む素朴な雰囲気の急須や小さな壷。その姿はある種独特の空気感を放ち、不思議と心が惹きつけられます。
これらは福建省で出土したもので、鉄分を多く含む良質な土でつくられています。時代は宋や民の時代のもの。小さな壷は宋の時代(960-1279年)、火薬を入れ、そのまま投げ入れるために生地が薄く挽かれています。
「このような類の多くが日本で唐物の茶入として使われたのですが、それは何故ですか?」安芦のオーナーが京焼作家・澤村氏に尋ねます。
「小さくても完璧な美しさがあり、そのサイズを例え大きくしたとしても尚、美しいからです。自分が見てもやはりそう思います。」
今度は澤村氏からの質問が投げかけられます。
「唐物によく見られる側面に入っている線ですが、火薬を入れるのに何故、(装飾のような線が)入っているのですか?」
一本の線は、全体の雰囲気を束ねるかのように美しく、絶妙な位置に入れられています。
(続きは次のページにて)
文・撮影= Izumi TK