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底の形、あるいは口の形を削るために、台に開けた穴にはめ込んだ時についた線ではないかと、安芦オーナーは研究者と話をしたそうです。しかし、澤村氏は作り手だからこそわかる異なる見方をします。
澤村氏:
「(底に近い部分の)3点を指でもって釉薬をつけた指跡が残っていて、量産とは思えないほど、丁寧に作られていることがわかります。それほど高度な技を感じることができ、また線は轆轤を挽いて、生地が柔らかいうちに入れられたものです。」
安芦オーナー:
「当時のことを考えると実用性を重視した時代なので、美的な意味合いで線を入れることは考えにくい(火薬を入れるために作られ、日常の器はもっと厚手であるため)。そうすると、台に置いた時にその線がつくと考えることが自然かもしれません。」
先人が創りだしたものを通して、お互いの知識を出し合い、共に謎を解き明かす時間。どちらの見解も頷けるもので 、熱いやり取りが続きます。それは国を超えて、時空を超えて、私たちが先人と出会うことができる瞬間。
最後は「今度、お互いに資料などを用意して、日本でこの話の続きをしましょう」と笑顔で幕を閉じました。
この壷をつくった職人は、この様子を見ながら、嬉しそうに微笑んでいるようにも感じられ、次回の文化交流が楽しみです。
文・撮影= Izumi TK