【特別賞】古川 千夏さん(広島県) 作品名:七宝蓋物『むじな菊』
– 作品説明 –
菊の模様を自分なりにデザインして、有線七宝技法で表現した作品です。模様の線である銀線は通常研磨して滑らかな面にするものですが、私は銀線を突出したままにすることにより、陰影や純銀の輝き、焼き物ならではの質感を感じられる独自の技法で制作しています。
古くから伝わっている菊模様は、季節を大切にする喫茶の場にふさわしくもあり、七宝で一風変わった表現の目を引く香合があればと思い制作しました。
– Prifile –
2018年広島市立大学大学院芸術学研究科金属造形研究室修了。七宝を素材に独自の表現を行う。2016年そば猪口アート公募展準大賞、ART MEETS ARCHITECTURE COMPETITION 2016最優秀賞。2017年学長奨励賞、2018年修了作品優秀賞。2019年大徳寺龍光院看松庵収蔵。他受賞、展覧会等多数。
【講評】
中山福太朗氏/ 茶人・会社員
伝統的な技術である七宝に、新しい技法を取り入れることで生まれた、デザインの新鮮さがありました。その新鮮さというのも、派手なそれではなく、伝統の上に小さな石を置くような印象のものです。これは貶しているのではなく、非常に重要かつ誉めています。私自身もそうありたいと思っています。伝統はそうやって積み重なっていき、厚みを増していくものでしょう。
一方、この技法はもっとポテンシャルがあるのではないか、やり切れていないのではないかな、とも思いました。手のひらサイズの蓋物は、私は香合としての使用を考えますが、そうであればややデザインの密度に緩さを感じました。