うるしの木から採取した樹液は、ミルクをたっぷり入れたミルクティー色を
しています。それを生漆(きうるし)といい、精製すると飴色に変化します。
このお皿は、精製後の顔料を加えていない漆が塗られていて、温かみがあり、
澄んだ水のように清らか。
透明のガラスであるからこそ可能な表現です。
そこに描かれている蜻蛉は、前進しかしないことから”不退転”の象徴、
勝ち虫として縁起の良いモチーフです。
また害虫を捕食することから、五穀豊穣を願う穀霊の象徴とされてきました。
蜻蛉が羽を羽ばたかせる、夏から秋にかけて見られる光景を重ねます。
光が差し込むと悠々と飛び回る陽気な姿になり、少し灯りをおとせば、
夕暮れのしっとりとしたシルエットのように。
空間によって見え方の変化を楽しめる漆ならではの作品です。
work by Isao Ota
φ22 x H2
文・撮影= Izumi TK