龍図陽刻茶杯
市岡 和憲
市岡 和憲
煎茶道具の窯元、村田亀水氏に師事し、現在は京都府美山町で作陶している市岡氏は、和菓子屋の家に 生まれ育ちました。子どもの頃から菓子作りの手伝いをしてきた経験で培った感性が、作品づくりに 大きく影響しているといいます。
穏やかにゆっくりと話す市岡氏は、職人から作家としての道を歩みだした時のことをこう語ります。 パソコンや IT 産業の発展が目覚ましくなってきた時、時代とは反対にある手仕事で近代工業化技術を 越えたいという思いが芽生え、2008 年頃から公募展に応募するようになりました。
しかし、勉強を積極的にするも結果を出せず、悩みぬいた日々が続きます。“これがだめなら、陶芸を 辞めよう”と思ったことも。そんな時、「必ず見ている人がいるよ」という声を出会った人から かけてもらい、その言葉が励みとなり、ついに入選を果たしました。 職人としての進化を望む市岡氏。
儚さや朽ちていくものの中に美を見出す文化を日本らしさととらえ、 限りなくシンプルな造形、見飽きない、自分らしい“もの作り”をしていきたいと語ります。
銘を入れずとも自分の作品とわかるものを作るという、精進の精神が光ります。 どのお茶を急須に淹れ、何を皿にのせようかと想像が広がるような遊び心のある作品に、今後の 市岡氏の進化が楽しみです。
Profile
1968 年 | 京都生まれ |
1987 年 | 京都府立陶工技術専門学校卒業 |
1989 年 | 村田亀水氏に師事 |
1996 年 | 独立 京都美山町に開窯 |
2007 年 | 京都市が技術参考作品として急須を買上 |
日本伝統工芸展及び同近畿展で入選 |