第六回の”茶時”、左右Salonにて。
美術工芸史が専門の前﨑信也氏(京都女子大学准教授)とともに、
建築家やデザイナー、学芸員、そして企業人の方々と多彩な顔ぶれが
揃い、一茶庵の佃梓央さんが煎茶を淹れてくださいます。
はじめに掛け軸のお話。
赤い色の柔らかい線で竹が描かれており、さらさらと風そよぐ竹林の風景が
部屋に広がります。
テーマは『竹』。
この掛け軸を描いたのは、大正から昭和にかけて竹工芸の世界で活躍した
飯塚琅玕斎。そして、琅玕斎に刺激を与えた初代・早川尚古斎へと話が
すすみます。
実際に早川尚古斎がつくったハットを手にするという貴重な体験をし、
その発想・デザイン力と技術力の高さを実感しました。
また、九代市川團十郎が所有することで、注目を集める仕掛けを考えた
ところにマネージメントの高さが窺い知れます。
一方、海外に視点をおいてみると、日本の竹工芸が関心を集め始めたのは
1980年代。日本人がそれほど関心を示さなかった頃、収集家の一人として、
アメリカ化粧品大手ニュートロジーナ元社長、故ロイド・コッツェン氏は、
膨大な数の竹籠を収集し、積極的に展覧会を開いたといわれています。
そのような動きもあって、海外での需要が高まりつつあります。
何に価値をおくのか、私たちの見方・考え方、生き方の先に、消えゆきつつある
存在を確かなものとして、次の世代に手渡していく。
そのすべては今に生きる私たち次第であることを感じながら、お茶を思い思いに
いただきます。
12月にフランスで開催される「日本の竹の展覧会」。
”自由な表現”と”文化につながる表現”。
今後、この天秤はどちらかに傾いていくのでしょうか。そして私たちは
そのことを、どのようにとらえるのでしょうか。。。